2012年4月24日火曜日

図録▽脊椎動物の寿命


 理科年表にある脊椎動物の寿命一覧をほ乳類など5種類の基本分類毎に長い順から並べて図録にした。取り上げられている動物種はそれほど多くはないが、その範囲でどんな傾向があるかを見ると以下のようなことがいえるだろう。

 寿命が152年と最長のチョウザメは、卵巣卵の塩蔵品がキャビア(カスピ海産の製品が最高級品とされる)となる魚類であるが、サメという名がついているにもかかわらず、チョウザメ目チョウザメ科に属する硬骨魚であってサメ(軟骨魚)の仲間ではない。

 図の中で第2位の寿命の動物も魚類に属するウナギである。一方、図の中で最短の寿命の動物も魚類のタツノオトシゴである。

 水生の脊椎動物の世界は、寿命の点からは、陸生の脊椎動物の世界� ��りレンジが広いということになる。

 ほ乳類の最長寿命動物はインドゾウの80年、鳥類の最長寿命動物は、それより短い65年以上のコンドル、爬虫類ではアオウミガメの37年、両生類ではヒキガエルの36年と、おおむね、後から進化した高等動物の方が寿命が長い傾向があるようだ。最長寿命動物より寿命の短い動物についても同様の関係が成り立っているように見える。


どのように原子はpostiveイオンになるのでしょうか?

 これは、下等動物は特殊な生活圏でのみ生き残れているのであって、寿命に制約のない一般的普遍的な生活圏からは排除されてしまっているからだともいえる。ところが上で見たように魚類の世界は下等動物だからといって寿命は短くない。

 こうした点から、陸上では、ほ乳類と爬虫類が生活圏をめぐって競合することがあるうるが、水中と陸上とではそうした競合が生じないので、両者は全く別の動物世界であるということがうかがわれる。

 こうした動物種の間の寿命の傾向は身体の大きさとも関係している。

 一般に、寿命など動物の時間現象は、身体の大きさ(体重)の1/4乗に比例するとされる。


何がスポンジにその形状を与える

「大きな動物ほど、何をするにも時間がかかるということだ。動物が違うと、時間の流れる速度が違ってくるものらしい。たとえば体重が10倍になると、時間は1.8(100.25)倍になる。(中略)寿命をはじめとして、おとなのサイズに成長するまでの時間、性的に成熟するのに要する時間、赤ん坊が母親の胎内に留まっている時間など、すべてこの1/4乗則にしたがう。日常の活動の時間も、やはり体重に1/4乗に比例する。息をする時間間隔、心臓が打つ間隔」(本川達男「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 」中公新書、1992年。下表参照)

時間のアロメトリー式(べき乗に比例する式)
(ほ乳類、時間は分、体重Wはs)


何が実数のdivisonの例です。
寿命 6.10×106W0.20
98%の大きさに達する時間 6.35×105W0.26
懐胎期間 9.40×104W0.25
呼吸間隔(呼吸周期) 1.87×10-2W0.26
心臓の鼓動間隔(心周期) 4.15×10-3W0.25
(注)Lindstedt and Calder (1981)より抜粋
(資料)本川達男「ゾウの時間ネズミの時間」中公新書、1992年

 すなわち、上では最も高等な動物は「寿命に制約のない一般的普遍的な生活圏」をもつとしたが、これは、身体の大きさに制約のない生活圏をもつことと同義である。他の動物より競争優位に立っている最も高等な動物は原理上は際限なく身体を大きくし寿命も最も長くなれる訳である。

 ところで、いろいろな時間現象がこうした法則に従っているということは、体重にかかわりなく、一生の時間現象総量は同じということにもなる。


「寿命を心臓の鼓動時間で割ってみよう。そうすると、哺乳類ではどの動物でも、一生の間に心臓は20億回打つという計算になる。寿命を呼吸する時間で割れば、一生の間に約5億回、息をスーハーと繰り返すと計算できる。物理的時間で測れば、ゾウはネズミより、ずっと長生きである。ネズミは数年しか生きないが、ゾウは100年近い寿命をもつ。しかし、もし心臓の鼓動を時計として考えるならば、ゾウもネズミもまったく同じ長さだけ生きて死ぬことになるだろう。小さい動物では、体内でおこるよろずの現象のテンポが速いのだから、物理的な寿命が短いといったって、一生を生き切った感覚は、存外ゾウもネズミも変わらないのではないか。」(同上)

 なお、上の表の脊椎動物 の寿命と体重の関係式に日本人の男女30歳代の体重の平均値61.5s(図録2182)をあてはめると、寿命は26年6カ月となる。実際の寿命は、平均寿命でさえ、この理論値の3倍以上であり、動物種ごとのバラツキというより、人間の寿命は動物としての寿命に人間ならではの寿命の追加分を加えたものと考えるべきであろう。


 動物が身体の新機能として、進化上、獲得するものを人間は道具・機械・薬品といった外部の新機能として開発し利用する。そういう意味で動物の進化は人類史の発展に相当している。その分、人間の法則は動物の法則をうちに含んで、同時に、それを乗り越えているといえる。人間ならではの寿命の追加分はこうしたことから生じているに違いない。人間が動物に近かった原始時代の平均寿命は動物の法則に即していただろう。

(2011年8月18日収録)



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